僕の幸せ君の幸せ






近頃のルスカは妙に忙しそうで、慌ただしくて、部屋も綺麗じゃない。
だから仕事が多くなるからじっとしていろとも言えない。これが惚れた弱みなんだろうか?
とにかく、そこら中をドタバタと歩き回って、家にいてもろくに話ができない。
飯食うときだって何かしら資料を見てて、俺の話なんて上の空。
外に出て行けば、出て行った出それっきり。
遅くなるまで帰ってこない…。



俺の冤罪が無罪になって、こうしてルスカと一緒に過ごせるようになって、本当に嬉しくて……。
でも、この頃のルスカはもう暫く先の裁判のことで頭がいっぱいで…何だかおもしろくない。
我が儘を言うつもりはさらさら無いけど、でもやっぱりムカツク。
他にも帰らない日があったりすると、おみやげとかで結局丸め込まれて…。
子供扱いしているのかと思うとムカツク。
そう、他にも、他にも……とにかくムカツク。




ムカツク、ムカツク、ムカツク……。









けど、少しだけ………ウソ、本当は



少し寂しい。傍に…いてほしい。










でもそんなこと言ったら、ぜっったいバカにされるから、ぜっったい言わない。
黄昏色の空は、今の季節はじきに暗くなるだろう。
今日のルスカもまた遅く帰ってくるとみた。
それともどこかに泊まってくるのだろうか?
「せっかく作った夕飯が、またダメになっちまうじゃねーか……」
窓際で頬杖をついて、黄昏色の空を眺め。



「バカルスカ」



小さく、その空に向かって愚痴る。







「誰がバカだって?」







不意にドアの方から返ってきた声に驚いて
目が裂けんばかりに見開いてそちらを見ればそこには確かにいないはずのルスカが立っていた。
「どうしたんだよ?てっきり今日も遅くなると思ったんだけどな」
まだドアの外でおたおたしているルスカに
「なぁ、どうしたんだよ」
入ってくる様子のないルスカに軽く声をかけると、どうも落ち着かない様子で部屋を見渡し。
「あぁ、分かっている」
そう言って入ってきたルスカの手には、とても奇妙なモノが握られていた。
そう、俺が
「えぇ?」
と間抜けな声を出してしまうほどに……。
なぜなら彼の片手には、大きなクマのぬいぐるみが抱えられていたからだ。
ルスカはばつが悪そうに頭をかいて
「みやげだ」
そう言って、その物体Xを放ってよこす。
「うわ!ちょっと!!」
かろうじてそれをうけとり
「なにすんだよ、危ねーじゃねーか!」
ルスカを睨んで、ぬいぐるみへと視線を移す。
するとそのぬいぐるみの腕が、小さなチョコレートの缶を抱えていることに気が付き
「これもオミヤゲかよ」
その缶自身をさして
「あぁ、それか…それはだな………」
ルスカの視線は問いかけた俺をとらえてはおらず、何処か目線をそらせているようだった。
「今日はバレンタインデーだろう、それで……ガイズは、チョコが好きだと言っていたから、だからな……」
いいわけじみたような言い方に、つい単刀直入に聞いてしまう。
「それでわざわざ早く帰ってきてくれたのかよ、この忙しいのに?」
そんな事実が嬉しくて、つい顔がにやけてしまう。
「笑うな!今日一日くらいならすぐにでも取り返してみせるさ」
そう言うと、走るように奥の部屋へ消えていった。



その姿がどうしようもなく可笑しくて、つい吹き出してしまう。
今日一日、仕事もせずにずっと俺へのプレゼントを考えているすかの顔と姿が浮かんできて
それはついに含み笑いに変わってしまった。
けれど、ルスカには聞こえないように必死になって声を殺す。
暫くして笑いが収まると、ルスカが土産に残していったクマを目の前において胡座をかく。




「なんだかな〜」




ガイズの脳裏に、刑務所にいたときにルスカとしたたわいもない会話が、その光景が浮かんでいた。
「あんなことまで覚えてるなんて、やっぱり律儀なやつ」
そこまで言うと、また笑いがこみ上げてきて



「笑うなといてるだろ、もう勘弁してくれ」



私服に着替えたルスカが奥から姿を現す。
「あっ、ルスカ」
クマから顔を上げ
「こいつさ…」
「ん?」
「このクマのこと、覚えていてくれたんだろ?刑務所の中で話したこと」
「あ、まぁ……な」
そう言うとルスカは軽く笑い、俺は何気ないそんな顔にドキリとする。






(あぁ、やっぱり俺…ルスカのことが好きなんだな)






こんなちょっとしたことに胸が躍る、ちょっとした行動に心を奪われる。
でも、それはルスカには内緒。
「なんだ、ガイズ。そんなにニヤニヤ笑って、端から見るとかなり怪しく映るんだが……」
そこまで言われて、自分が笑っていたことに初めて気が付いた。
「ゴメン、いろいろと考え事しててさ」
そう言って満面の笑みで返すと、ルスカも笑い返してくれる。
あの時…刑務所の中にいたときは想いもしなかった時間、幸せで、大好きな人が傍にいる。
「さぁ、食事にしよう。ガイズが作ってくれた料理が冷めてしまうからな」
ルスカは先に席に座り、俺もその後を追いかける。
「そうだな!」
そう言うとニヤリと笑って
「デザートはもちろんチョコレートだよな、ルスカ」
するとルスカは、真っ赤になって目の前の食事に手をつけ始め、俺はその光景を楽しそうに見つめていた。



あとがき


一応目指したのは甘々のルスガイです。
でもやっぱしみごとに玉砕
なんかルスカ君が妙に可愛らしくかっこよくない気が……(泣)
初のルスガイですが、こんなんでいいんでしょうか?
これからも勉強してがんばります。

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