昨日まで僕は暗闇の中をさまよっていた
光をくれたのは君
でも次にヤミが訪れたときは
俺はどうするのだろう






〜next story〜


VOL・1 ココア







つい昨日、ガイズが仕事から帰ってきた
あきれるほど唐突に、彼はそこにいた
エバのくれた仕事だからそれほど危険はないと分かっていても
傷だらけの彼が朝食を作るために台所に立っていたときにはすこぶる驚いた
まるで掴めない幻想が己をあざけっているのかと思うほどに
だけど触れてみれば、確かにそれはガイズ自身
普通ならばそこで安心できるはずなのに
そこでハッピーエンドを迎えることができるのに




何かが心の奥に引っかかっている




まるで飲み込んだ何かが喉に詰まって取ることができないような
拭っても拭っても全てを振り払うことなどできない雫のような
そんな感覚が心の中を徐々に浸食していく










また今度彼と離れてしまったら俺はどうなるのだろう?










今回はガイズの近くに信頼できる者ががいた、それなのにこの有様だ
今度次はそうではないかもしれない
もっと長く離れていなければならないかもしれない
そんな考えが心の奥底で悲鳴を上げる






















君がいなければ、息をすることさえ忘れてしまいそうになる




















愛おしいという想いは、こんなにも簡単に独占欲に変わり果ててしまう
君を思うほど
胸が苦しい



どのくらいそんなことを考えていたのだろうか
きっとさっきからずっと同じ資料ばかり見ている俺を不思議に思ったのだろう
ガイズがフッと声をかけてきた

「ルスカ、どうかしたのか?」

ようやく我に返った俺はがばっと顔を上げばつが悪いように髪をかき上げる

「イヤ、何でもない。少し……考え事をしていただけだ」

「少し疲れてるんじゃないか?何か飲み物でも持ってくるよ、何がいい」

特に喉が渇いているわけでもなかったが、少しは気晴らしにはなるだろうと思い

「悪いな、ならコーヒーにしてくれ」

「分かった、砂糖は入れなくていいンだよな」

「そうしてくれ」

ガイズが扉から出て行くと、俺は持っていたペンをインク入れに投げ込み椅子に寄りかかる
その時なった椅子の音が、まるで自分の魂のきしんだ音のように聞こえた
暫くすると湯気が立つコーヒーカップを二つもったガイズが扉から入ってきた

「ほら、これ飲んで少しは気晴らししろよ」

「あぁ、ありがとう」

マグカップからはほのかに甘い香りが……………

(甘い香り?)

不思議に思って中を覗いてみると、そこにはコーヒーよりも色が薄くて、不透明に濁った茶色い液体が入っていた

「ガイズ……これは……………」

「あぁ、ココアだよココア。たまには別のものを飲んで気晴らしってのもありだろう」

そう言って彼が笑えば、自分の顔も自然と柔らかくなる
おもしろいくらいに
ガイズの隣に腰を下ろすと湯気がたゆたうココアを口元に運び一口飲み下す。
すると、それほど甘くない甘みが口の中に広がり、胸の中が暖かくなる

「うん、美味いな」

「だろ!このココア俺のお薦めなんだ、だからルスカもきっとそう言ってくれると思ったよ」

こんなたわいもない話で笑い合う
それだけで幸せなはずなのに、不安という形にならないものが心の中でうごめく





「懐かしいな………」






ガイズはぽつんと呟き、彼の方を向いた俺と目が合うと恥ずかしそうに顔を染め、懐かしむように語り出す







「母さんがさ………俺がまだ小さい頃、喧嘩して泣いて帰ってくると、こうやってココアを出して、膝枕をしてくれたんだ
 そうするとさ、なんか無性に心が落ち着いて、もっと泣き出しちゃったりするんだ……………
 アハハハ、なんかこんな話するの……恥ずかしいな。………だからなのか、よくわかんねーけど、ココアって、昔から好きなんだよな」







そう語る彼の横顔は、とても優しく、とても穏やかだった

「だから、ルスカもさっ!」

そう言って強引に俺のカップを横取りすると、じゃまにならないようにサイドテーブルに置くと、俺の頭をぐいっと引っ張り
無理矢理自分の太腿の上にのせる

「………うわっ!」

「そんなに力いれてると、すぐに精根尽き果てちまうぜ」

そう言って、まるで照れ隠しのように笑うガイズ

「なら、少しの間こうさせてもらおうか」

そう言って靴を履いたままソファの上に足を投げ出し目を閉じる
その後俺たちは特に話すわけでもなく、しばし沈黙が流れる

どのくらいの間そうしていただろう
二人とも特に会話もなく仕事もせずに時間だけがゆっくりと流れていく
すると不意にガイズが何か思い出したようにしゃべり出した。

「なぁ、ルスカ」

「なんだ?」





「俺がいなかったとき、どうしてたんだ?」





「どうといわれてもな………」

そうだ、そんなこと問われてもハッキリ言って困る













なんと言葉にしたらいい、どうやって嘘を付いたらいい。













嘘を




















「俺はね………ルスカと逢えなくて………………寂しかったよ」





















えっ…………………





「なんだよ、何鳩が鉄砲玉食らったような顔してるんだよ」















君はいつでも綺麗
心まで
でも俺は
君の傍にいる己は?















「ルスカは?寂しかった?心配した!?」




「……俺は……………………」





俺は何を考えていた?
君さえ信じられず
ただ閉じこめることだけしか…………………………





「…俺は……………」





言うな





「俺は、君を………」





言うな……………言うな!





「引き留めることしか…………!」





言うな………………言うな………言うな!言うな!!!





「この先どうしたら、お前をココに閉じこめておけるか…………そんなことばかり考えていた…………………」










「ルスカ……………どうしたんだよ、なんで…………泣いてンだよ…………………………」















その時俺は、自分の浅ましさに涙が出た
愚かで、愚かで、あまりにも人間的であり
欲望をあらわにしている自分に。















「………………悪い、こんな男………もう飽き飽きしただろう?」

そう言って勢いをつけて起きあがる

「…ど………して……………」

「ガイズ?」

「どうしてルスカはそうやって一人で決めつけちまうんだよ!そんなことあるわけねーだろ!!何もかも一人で背負い込むなよ…………
 俺でっているんだからさ、もっと気楽に生きろよ、そんなんじゃ見てるこっちの方が疲れちまうよ…………」

「……ガイズ」

「確かに、俺がずっとルスカの傍にいるなんて保証はできないけど、でもいるから!傍にいるから!!絶対なんてあり得ないから約束なんて出来ないけど
 でも、仕事ほっぽって出て行ったりしないから………ちゃんとココに帰ってくるから……………だからもう少し、気楽になってもいいんだぜ」

そう言うと彼は、俺を優しく抱きしめる














うぬぼれてもいいのだろうか?
君にとって僕は…………少しでも必要な存在だと……………………
信じても、いいのだろうか














「迷惑をかけたというか、格好悪いところを見られてしまったな」

「べっ、別に、俺なんて………いつも格好悪いとこばっかだらな……………」

照れてるのか、今まで俺を抱きしめていた腕を解き放ち、そっぽを向いてしまう。

「そう言われてみれば、そうかもしれないな」

「あーーー!!そう言うときは違うって言うのが相場ってもんだぞ!ルスカ!!」

「何だ、図星だったのか、相変わらずわかりやすいなガイズ」

「もーーーーーー!バカルスカ!!!」










幸せだと思う、君がいて、笑っている。
それだけで、何よりも幸せだと思う。

もしも、また不安に駆られるようなことがあったら

ガイズの言葉とその笑顔と

温かなココアを淹れよう





END




あとがき

将弘さんからいただいたキリリクです。
君がいないの続きで、ガイズに甘えるルスカなのですが………………
ハッキリ言ってただルスカが壊れただけな気が…………………嗚呼…………………………(泣)
一応これでもがんばって甘えてもらったのですが、如何でしょうか??
こんなへなちょこでごめんなさい(涙)
初キリリクなのに…………。
まぁ、できてしまったのは仕方なく(オイオイ!!)
念願の膝枕!!!
ガイズ君にして頂いちゃいました〜〜〜〜〜
本当は公園の木陰で…………なんてのが萌えなのですが(笑)
今回は家の中で勘弁して下さい。
それにしても甘いのこのシーンだけ、後は暗いっす
一応この話には続き(?)みたいな話があるので暇だったらそれも書いてみたいです。
最後に
将弘さん、こんなんでよかったでしょうか??
他の方々も感想の歩うBBSで待ってますのでじゃんじゃん書き込んで下さい
おねがいします





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