貴方がいれば
ここが本当の地獄の底だとしても
きっと幸せだから





幸せ方程式






鳥の声が聞こえる、微かな日の光が感じられる
でも今日はいつもより一段と寒いから
もう少しだけ眠っていたいな
そんなことを思いながらゴロンと寝返りを打つとそこにあるはずの
正確に言えばいるはずの人が

いない

「うわ!!」

あるはずのストッパーが無くてベッドの上から転がり落ちてしまう

「あれ?ヴァルイーダは?」

いつも側にいるはずの彼の姿が見つからなくて俺は急いで起きあがる

「ヴァルイーダ」

眠る隣には誰もいない
まるであの魯この煉獄に時が逆戻りしたような感覚だった

「ヴァルイーダ!」

俺は素肌にシャツだけまとって家の中を探し回った
するとキッチンの方から俺を呼ぶ声が聞こえて………

「ガイズ?」
「ヴァルイーダ」

俺は目の前に現れたヴァルイーダにギュッと抱きつく

「どうしたんですか」
「ううん、只隣にヴァルイーダがいなかったから………ちょっと怖くて寂しかっただけ」
「………ガイズ」

あの刑務所での経験は俺たち二人の心に見えない傷跡を残した
そのぶり返しが今でもこんな風におとずれる












貴方がいなくて
この世界の全てが
音ヲ立テテ壊レテイクヨウナ気ガシタ












そんな考えを振り払うように俺はさらにきつくヴァルイーダを抱きしめた

「あの……ガイズ」
「なに?ヴァルイーダ」
「その格好で抱きつかれると、私の理性が飛んで行ってしまいそうなんですが…………」
「えっ?理性?」

そして俺が改めて自分の格好を見ると、それは素肌にシャツを羽織っただけでとても淫逸な姿だった

「ヴァっ、ヴァルイーダの馬鹿!」

俺は恥ずかしくてシャツの前を寄せ合わせ、キスマークの散った身体を隠しその場にしゃがみ込んだ
ヴァルイーダはそんな俺を見て目をつむるといきなり俺の身体を抱きかかえあげた

「ゎわっ!」

それは俗に言うお姫様だっこと言うもので俺はカァッと頬を赤らめた

「おっ、おろせよヴァルイーダ!一人で歩けるって!」
「黙って」

と言われ、唇をふさがれた

「……ぅん…………あふぅ……………………ふぁ…………………………」

そして俺はいつの間にかベッドの上に横たえられていた

「ヴァルイーダ?」
「早く服を着て下さいねガイズ、私が理性を保っていられる間に。そしてご飯を食べにきてください」
「ごはん?」
「えぇ、いつもガイズが食事を作ってくれるので今日は僕が変わりに作ってみました。料理を作るなんてとても久しぶりなのでうまくできているかわかりませんが」

そう言って、彼独特の少し困ったような顔を浮かべると俺の額にキスをした

「………っ!!」
「冷めないうちに早く来て下さいね」

そう言ってヴァルイーダはキッチンへと戻っていった
俺はと言うとしばらくベッドの中で真っ赤になった顔を冷やしてから起きあがってきちんと服を着た
そしていいにおいのするキッチンへと足を運ばせる

「改めて、おはようヴァルイーダ」
「おはようございますガイズ」

そう言ってからいつものように抱擁を交わす
彼の肩越しに目を向けると、テーブルの上にはもう朝食が用意されていた
それはとてもヴァルイーダらしく、綺麗にだがシンプルでまるで絵にでも描いたようなものだった

「うわぁ…凄いじゃんヴァルイーダ」
「形ばかりで、味の方はどうかわかりませんけどね」

そう言った彼は少し困ったような笑顔で笑った

「大丈夫、きっとおいしいって」

そして互いに向かい合うように席について朝食を食べ始めた
ヴァルイーダの作った朝食は見た目に比例しておいしくて、上品な味がした

「そうだ、ガイズ」

ちょうど食べ終わったその時にヴァルイーダが机の下から四角い物を取り出して俺に手渡した

「なに?」

それは少し大きめの、俺の手に収まりきらないくらいの大きさで、その形からヴァルイーダが描いたのであろう絵だということがわかった。

「この絵を俺にくれるの?」
「えぇ、本当は昨日渡したかったんですけど、絵の具が乾いているか少し心配だったのもで」

そう微笑むヴァルイーダはとても幸せそうで
俺は綺麗に包まれている包み紙を丁寧に開いた

「うそ………これ………………」

底にはとても幸せそうに笑う一人の少年がいた

「これ………俺?」
「えぇ」
「でも、ヴァルイーダは人物画は描かないって………」

暮らし初めて間もない頃そう言っていたヴァルイーダを思い出した俺はそう言って問い尋ねた

「ガイズだからです、ガイズだからどうしても描いてみたくなってしまったんです」

ヴァルイーダの言ったその言葉とこの絵は人生で最高のクリスマスプレゼントになった

「どうしよ………おれ、凄く嬉しい」

すると俺の両目からは自然と涙がこぼれ落ちた

「ガイズ………?」












初めて知った、痛みや哀しみ以外で
涙が流せるなんて
こんな俺にも
こんな綺麗な涙が流せるなんて………………












「おれ、今すごく幸せだよ、ヴァルイーダ」
「ガイズ、私も………貴方がいてとても幸せです」

席を立ったヴァルイーダは俺の隣に来て俺の頭をそっと抱きしめてくれた
俺はヴァルイーダからもらった絵を目の前にかかげた

「よかったなお前、ヴァルイーダに描いてもらえて…………」

絵の中の少年にそう話しかけると、少年はとても幸せそうな笑みで織れとヴァルイーダに笑いかけた








ヴァルイーダストーリーEND


















































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