今年は本当に激動の一年だったけど
それも後数時間
今は
最愛の人が側にいる





A HAPPY NEW YEAR









「ガイズ!早く支度しないと遅れるぞ!」
「わっ、わかってるよ!!」

今日は12月の31日、時間帯は新年まで後2時間と少し

「ちゃんと暖かい格好をしていけよ、外は寒いんだからな」
「はい、はい」

俺たちの住むこの街にももうじき新年が訪れる、俺たちはそんな瞬間をこの街の中心にある公園で迎えることにした
底では今日一日中イベントがおこなわれていて、これから行く新年へのカウントダウンはこのイベントが一番盛り上がるときだ
多くの人と共にキスと包容で新しい年を迎える

「……まったく、俺はあんまり気が進まないんだがな」
「なに?ルスカ??」
「いや!何でもない!!」
「そう?」

本当はルスカがあんまり気乗りじゃないのは知ってるけど
今まで若いからって言って母さん達に連れてってもらえなかったんだからいいじゃん
なんて思ったりするのだ

「お待たせ、ルスカ」
おれは黒のズボンにダークグリーンのジャンパーを羽織ってマフラーをして
ルスカはグレーのズボンにブラックのロングコートに俺と同じマフラーをして

「これさ、俺たち恋人同士に見えるかな?」
「さぁな…………」

そう答えるぶっきらぼうなルスカ
でもカッコイイよ

「それじゃぁ、そろそろ出かけようか」
「うん」

そう言って扉を開ける
「よう」
「エヴァ!?」
「………エヴァ、何しに来た」

そこには暖かそうな革ジャンを着たエヴァが飄々と笑っていた
「いや、幸せそうなお二人を迎えに来ようと思ってさ」
「……余計なことを………………………」
「いいじゃんかルスカ、大勢の方が楽しいだろ?」
「まぁ………な」

(こいつめ、相当俺がいることが気に入らないんだな)

何かとても楽しそうに笑っているエヴァの方を見る

「どうしたのエヴァ、そんなに笑ってさ」
「いやぁ〜なに、新年をお前と迎えられるかと思うと嬉しくってさ」
「そんなモン??」
「そんなモンさ」

そう言ってエヴァは俺の肩に手を回すと景気よく歩き出した
後ろでそれを苦々しく見つめていたルスカがいたのは、少し見ないふりをしておこう
しばらくストリートを歩いていくと見慣れたお店の前にさしかかった、その中はまだ薄暗い灯りがついていた

「どうした、ガイズ君」
「ちょっとね」

俺はそうエヴァに断って彼の手からサッと抜け出すとその扉を軽くカランと開けた

「シオン、いるの?」

少し控えめな問いに奥から人が顔を出した

「あれぇ、ガイズ。どうしてここに?」
「あぁ、これから公園の方でやってるカウントダウンイベントに行くんだけど、シオンも一緒に行かない?」
「俺?でも、まだ明日の仕込みとかあるしな」

シオンと俺は刑務所の中で友達になって、出所してからもよくお互いに会いに行ってる

「ちょっとくらい平気だろ?」
「わかった、ガイズがそこまで言うなら俺も行くよ」

コック姿のシオンもいいけど、普段着もかっこいいんだよな

「それじゃぁ行こうか、ガイズ」
「うん」

店の外では待ちくたびれた大人二人組外気を白くして待っていた

「お待たせ」
「あれ?俺以外にもいたの??」
「うん、そうだけど…………まずかった??」
「いや、そんなことはないよ」

そう言う彼の笑顔がどことなく張り付いた感じがしたのは俺の気のせい??
四人でしばらく歩いていくと街の中央公園に着いた、そこにはすでに多くの人であふれかえっていた

「わゎぁ………すっげぇーーーー!!」
「ガイズは、こういうの初めて??」
「うん」

そこにはいつもとは別世界にいるんじゃないかと思われるほどに、綺麗な装飾が施されていた

「な〜んだ、こんな日でもお子様は家の中から出させてもらっていなかったのか??」
「うるさいな〜エヴァは!」

そう言ってエヴァの身体をどつこうとしたんだけど
それはするりと交わされてしまって、公園の中心に向かって逃げていった

「あっ、待てよ!」
そう言ってエヴァを追って駆けだした俺だったんだけど誰かの背中にぶつかってしまってしりもちをついた

「いったた………」
「だいじょうぶか!?ガイズ………」
「うん、平気」

後ろからルスカの声がして綺麗ですらっとした手が



って、これって誰の??



「大丈夫ですか?ガイズ」

誰かと思えば

「ヴァルイーダ!?」
「とても元気な子どもがぶつかってきたなって思ったら、貴方だったんですね」
「なんだよそれ」

俺を引き上げたヴァルイーダは片手を頭に置いて俺の頭をいい子いい子と撫でた

「こっ、子ども扱いするなよ!!」
「子ども扱いじゃなくて、可愛いからですよ」

そういわれ、俺は真っ赤になって俯いてしまう

「なんだヴァルイーダじゃねーか!」

まさに天の助けとはこのことなのか、エヴァが絶妙なタイミングで声をかけ、ルスカがその好きに俺を引き戻す

「大丈夫か?ガイズ」
「うっ、うん」

ちょっとドキドキしたけどね
その後エヴァとヴァルイーダは昔話でもしているのだろうか二人で話していた

「俺たちは少しむこうのほうへ行こうか」
「そうしよう、ガイズ」

ルスカとシオンに促されるまま俺はさらに中心部へと向かっていく
この公園の中心には大きな噴水があって、その中心には遠くからでも見えるくらい大きな時計があった
それも綺麗に装飾されていた

「あれ!ガイズじゃねーか!?」

声の聞こえる方に顔を向けると銀髪の頭がちらっと目についた

「もしかして、ジョゼ〜〜!?」
「もしかしなくても俺だぜ、それにしてもひっさしぶりだな〜〜」

彼の隣にはあの時のようにイオがちょんと佇んでいた

「こんばんわ」
「うん久しぶり、イオ………」

って、まてよ
ルスカにエヴァにシオン、ヴァルイーダにジョゼにイオ…………これってもしかして、もしかしなくても全員集合ってヤツじゃ……………………
そう思うと何だか無性に嬉しくなってきて、俺はクスッとほほえみを漏らす

「な〜に笑ってンだよ、気持ちワリィヤツ」
「どうしたの、ガイズ」
「いや、何でもないんだ。ただ、スッゲー嬉しくてさ」
「何がそんなに嬉しいんだ?坊主」

いつの間に戻ってきたのかヴァルイーダとエヴァが俺たちの後ろに立っていた

「ただね、あの刑務所にいた仲間がみんなここに集まったんだよ」

俺がそう言うとみんななるほどといったふうに頷いた













あの悪魔の巣窟のような収容所での仲間達全員がこうして収容所の外で相まみえることができる
きっとこれは奇跡にも近い素晴らしいこと











それを導き出してくれたのは








ルスカ








彼がいなかったら、こうやって和やかな雰囲気の中で笑いあえることなんて永遠に実現しなかった












「ありがとう、ルスカ」
「どうした?急に??」
「うん、何でもない」

そして俺は自分の頭をルスカに預ける
するとルスカは俺を後ろからギュッと抱きしめてくれる

「そろそろ新年のカウントダウンが始まるぞ」

公園中央の時計に目をやれば、この年が終わるまで後一分と迫っていた
するとみんなは気合い十分と言った感じで、エヴァなんか腕まくりまでしている

「どうしたの??」
「そうか、ガイズは初めてだから知らないかもしれないが。新年まで十秒前になると順番に十枚の金貨が公園の中心から投げられて

それを取った者は今年一年幸せになれるっていうジンクスがあるんだ」

「へぇ、そうだったんだ」
「それと後もう一つ」

いかにももったいぶった風に話すルスカに、俺は首をひねってその瞳に早く話せと訴える

「なんだよ」

そんな俺を見たルスカは少し苦笑しながら

「十枚目の金貨には不思議な力があってその年一番の幸せ者になれるってことと、一番大切な願い事が一つ叶うっていう言い伝えもあるんだ」
「十枚目の金貨…………か」

でも自分は背丈もたりないしどうしようもないかなと思っていたその時
みんなが大きな声で十秒前のカウントを取り始めた







今年一年は色んなことがあった、最初で最後になるであろう刑務所での生活、裁判、勝利、出所
そして幸せなルスカとの日々、きっとこの一年は俺にとって大きな意味を持っていたんだろう
世界がめまぐるしく変わっていって、きっと俺自身も成長した一年だったと思う
そして来年は………………







最後のカウントと共に俺たちの目の前には金色の金貨が宙を舞う

「もらったぜ!!」
「そうはいくか!!」

エヴァとジョゼが小競り合い二人の指先に当たった金貨が、ポトリと俺の手の中に落ちてきた
それはまるで導かれたかのようにすんなりと
そして、それと共に聞こえてくる大きな鐘の音、そして『A HAPPY NEW YEAR!!』の声





「「「「「 A HAPPY NEW YEAR GUYS !!!」」」」」





そうして降ってくる沢山のキスと包容、それでも俺はまだ金貨を握りしめて呆然としていた

「まったくよぉ、運の強いヤローだぜ」

そう言ってジョゼは俺の頭にヘッドロックをかけてくる

「うわぁ、いっイタイって!」

必死に抗議するもエヴァには

「本当、にっくい坊主だぜ」

と言って背中をたたいてくる始末

「そろそろ止めないか、二人とも」

二人にはいかじめにされていた俺をルスカ奪い取るようにして自分のところに抱き寄せる

「大丈夫か?」
「うっ、うん」

なんか、ウソみたい
でも
きっと今年は最高の年になるだろう

「あーあ、見ちゃらんねーぜ」

なんて言ってジョゼは俺たちをひやかす

「うるさい、子どもはもう帰って寝る時間じゃないのか?」

ルスカも負けじと応戦する
そんなに地上が嬉しくて、俺たちは心から笑い合った







公園からの岐路、俺たちはそれぞれバラバラになって会場を後にした
俺は手の中で光っているコインを月明かりにかざしてみた
まるでそれ自体が付きのように見えた

「なぁ、ガイズ。願い事はどうするんだ」
「あっそうか、でも今んところ願い事なんて無いしな………」

だって俺にはルスカがいるだけで幸せだから……………………………



「そうだ!これは君にあげるよ。最後までこれを読んでくれたみんなに今年一年幸せがありますように」












A HAPPY NEW YEAR!!今年も一年よろしくお願いします・雪螺







































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