君がいない







一人でいるのが、こんなにも静かなことに初めて気づいた。
こんなのも落ち着かないモノなのかと………。
一人でいる時が、こんなにも寂しいモノだと初めて気づいた。
今まではそんなこと何にも思っていなかったのに………。
一人の時、いつもよりも強く相手のことを思う自分に初めて気づいた
知らず知らずのうちに相手のことを考えてしまう自分………。

アイツは………ガイズはいつもこんな気持ちを抱いていたのだろうか?
俺と同じ気持ちを持っていたのだろうか?
アイツは………ガイズは………………

「ハァ…、またか……全然仕事になっていないじゃないか、これで間に合うのか?」
書類の方に目を落とせば、先ほどとどこが変わったのか、ほとんど進んではいない。
いつも、書斎で仕事をしていると、ガイズが傍にいて
紅茶を出してくれたり、コーヒーを淹れてくれたり、書類の整理をしていたり、ただ黙って俺の仕事を見ていたり……
ここにいれば、必ずガイズが傍にいた。
俺がガイズの方を向けば、笑って『がんばれよ』と言ってくれた。
だけど今は………
どこにも………
イナイ。

ことは一週間ほど前、久しぶりにエバが
俺の仕事場を尋ねてきたときだった。
俺はあいにく留守でいなくて、帰ってみたらガイズとエバが話していた

「ただいま、ガイズ。少し遅くなったか?」
いつものように家のドアを開け、ガイズが待ちくたびれているであろうダイニングに足を急がせた。
するとそこには、不思議な光景が広がっていた。
「お帰り〜、ルスカ。」
「おじゃまさま」
エバは、まるで自分の家のようにゆったりとくつろいで、俺の方に顔だけ向けてきた。
「エバか?久しぶりだな」
俺の親友は、ガイズと同じようにあのデューラが看守を務める刑務所で幽閉されていた。
罪状は窃盗犯だったが、あの刑務所から出てこれないことはイヤと言うほど分かっていた。
「そうだなー、どうだ仕事の方ははかどってるのか?」
「あぁ、おかげさまでだ」
そんな挨拶や世間話を一言二言交わすと、エバが本題を話し始めた。
「今日は遊びに来たとかじゃなくて、ガイズに頼みてーことがあって来たんだ」
「ガイズに?」
意外な言葉に俺は俺は目を見開いてガイズの顔を見る。
「うん、なんかさ仕事の方でどうしても人手が足りないっぽくてさ。んでちゃんとお金も払ってもらえるんだって
だからたまにはさ、俺もちゃんと働いてみたいなーって思ってさ」
何処か照れくさそうにガイズが笑った。
「あれー?さっき俺に言ってたこととずいぶん違う気がわねーか?さっきは…………」
エバがそこまで口を開くとガイズはあわてその口を塞ごうとする。
しかしエバが立ち上がってしまえばその身長差の為に手が口元まで届かず。
「お前『俺もたまにはルスカの役に立ちたいし』とか何とか抜かしてなかったかぁ?ガイズ」
「うっ、うるさいなー!別にいいだろう!」
「誰も悪とは言ってないぜ、ガイズ君」
まるで、子供のじゃれ合いのような言い合いがまるでほほえましい。
「何だガイズ、そんなことを考えていたのか?今までだって十分役に立っている」
そう言ってガイズの頭の撫でると、彼は少しくすぐったそうに顔をしかめ
「確かに家の事してるし、手伝いとかもさせて貰ってるけど、でもやっぱ世話になりっぱなしってんじゃなくて
たまには自分で働いた金でルスカに恩返しでもしようかなって思ってさ」
「そうか、ありがとうガイズ」
さらに頭を撫でる手を強くする。
「ちょっ、もうやめろって。エバもみてるんだしさ…子供扱いするなよ!」
「あぁ、分かった分かった」
本気ではないにしろイヤそうに頭を振り乱すガイズから、手を離す。

「それじゃ、保護者さんの承諾もいただけるってわけだ」
蚊帳の外であきれたように見つめていたエバが、急に話に割り込んでくる。
「あっ、あぁ。成長するうえでそういった経験も必要だろう、ガイズに頼むくらいの仕事だ、危険ではないのだろう?」
「あったりまえだ、こんな坊やに危険な仕事が勤まるかよ」
こんどはエバがガイズの頭に手をのせワシャワシャとかき混ぜる。
「やめろよおっさん、あんたまで子供扱いすんなよな!」
こんどは本気で怒ったガイズが、エバの手を振り払う。
「おっと、威勢のいいことだ。それじゃ、今度の月曜にここに迎えに来るから支度して待ってろよ」
「うん、ってエバ。もう行っちまうのか?」
「そうだ、そんなに急ぐことはないだろう?もし時間があったら一緒に食事をしないか?」
ガイズがエバの腕を捕まえて引き留めようとする。
その行動にエバは少し苦笑したように笑って。
「ワリィけどこれからまだやることがかなりあってな、すぐにでも本社の方に戻らないと行けないんだ。
新聞記者に戻ってから吐こう見えても忙しくてね、そのうち関わりがあったらお前の記事を書いてやるよ、ルスカ」
「あぁ、その時は大いに期待しているからな」
手を振って帰っていくエバを見送りながら、俺は家の扉を閉めた。

エバは約束通り昨日迎えに来て、ガイズは二泊三日つきっきりでエバの手伝いに向かった。

まだ、一日しかたっていないのに、この言いようのない不安は何なのだろうか?
アイツは無事でいるだろうか?
怠けずにちゃんと仕事をしているのだろうか?
食事はちゃんとしたのが出ているだろうか?
夜はどうしているだろうか?
変なことはされていないだろうか?

気にし出すときりがない、あれもこれも全てが気にかかる。
エバがいるから大丈夫だと言い聞かせても、言いようのない不安はぬぐえない。
「…ガイズ……………」
呼べばいつも傍にいた、手の届くところにいてくれた。
こんなんでは、すぐにダメになってしまう。
ガイズだっていつまでも傍にいてくれるという保証があるわけではない、
成人すれば自分で働きだすだろう。
この家から出て行くかもしれない。
こんな男ではない、もっとまっとうな女の子を捜し出すかもしれない。
その時
俺はあの手を離すことができるだろうか?
潔く、男として彼を見送ってやることができるのだろうか?
今、たった一日離れただけで
彼は……ガイズは……………
どうするのだろうか

そんなどうしようもない、堂々巡りの考えを抱いているうちに時計はすっかり針を進め
書類はいっこうに進まないままだった
「シマッタ!もう約束の時間になってしまうじゃないか」
いつも着ている普段着から急いでスーツに着替えると、靴を履くのももどかしく家から飛び出していった。

「ハァ、つったれたー」
休憩という声に、荷物を置いてその場にどかりと座り込む。
「なんだ、もうばてたのか?ガイズ」
「ちっげーよ!ちょっと疲れたなって思っただけだよ!」
「そうかそうか、やっぱ若いモンは違うな、その調子でがんばれよ。
あと、せっかく書いた記事を汚すなよ」
エバは下ろしてあった荷物を俺に渡しそう命令する。
「……
……………」
「何とでも言え、今の上司はこの俺だ」
偉そうにふんぞり返ったエバが、俺を見下ろして言う。
俺は何だか憎らしくなって、エバの足に軽くけりをいれる。
「エバこそ、早く休んだ方がいいぜ」
ニッと笑ってエバの方を見る。
「なんだ、俺の心配をしてくれんのか?優しいねぇ、ガイズは」
「ばーか、勘違いすんなよな、後々へばって足を引っ張ってもらっちゃ困るんだよ」
俺たちが言い争いをしていると、周りから当たり前のようにヤジが飛んでくる。
「おいおい、あんまり騒ぐなよ。動物が逃げちまうよ」
そう、俺は今エバの誘いで新聞記者数名と一緒に大きな森の中にいる。
なんでも、珍しい動物を探すとか行って、そこ界隈では名が知られている教授を招いてのことだそうだ。
その教授も少し年はいってても優しそうないい人で、今も一生懸命動物を探している。
そこへアメリアと呼ばれている女の人が俺に水が入ったコップを渡してくれた。
「そうね、元気なのもいいけど、ほどほどにしておかないとダメよ、ガイズ」
「ハイ、すいません」
俺はコップを受け取ると苦笑して答えた。
するとみんなから笑い声がわき起こった。
俺は恥ずかしくなって下を向いてうつむいてしまう。
でもいつの間にか、俺もみんなに交ざって大笑いをしていた。
ここはみんな家族みたいで、笑いが絶えない、いい人たちばかりだった。
「でも、ガイズも今日までだな」
するとシュトライトが奇妙なことを言い出した。
「へ?」
「あぁ、手伝いがだ、今日の夕方には帰れるからな、もう少しだ」
エバとは違う話に俺は目を白黒させる。
訳が分からずエバに助けを求めようとエバの方を向くと彼はシマッタと言った顔をして。
「ガイズ…ちょっと」
などと呼び寄せる。
俺はなにが何だか理解できずに、ただその言葉に従う。
みんなよりは少し離れたところに腰を下ろすと、俺はエバに睨みをきかせて問いただす。
「どーゆー事だよ、エバ」
するとエバはごまかすように笑って。
「ワリィ、ガイズちょっと話しそびれちまってな、実はな二泊三日じゃなくて一泊二日で頼みたかったんだ。
明日からは他のやつが派遣されるんだ」
急にそんなことを言われてもどうしても腑に落ちず、その方をつかんで問いただそうとする。
「じゃっ、なんであんなこと言ったんだよ!」
「それは……」
エバのやつ、ばつが悪そうに遠くを見つめ。
「ちょっと、ルスカをからかってみようかなって思ってだな……」
エバの意外な言葉に、俺はとまどってその言葉を反芻していまい
「からかう?」
その言葉にちょっと首をかしげ
「厳密に言えばそうじゃねーんだけど、なんて言うかさ、この前アイツと一緒に飲んだときに聞いたんだけど。
ガイズはルスカがいないときはいつも一人なんだろう?だからアイツも同じ環境においてやれば
もっとお前のことに気づきやすくなるんじゃないかという俺の少しばかりの心配りだ
それに、一人でいるときもお前には笑っていて欲しいと思ったからな、おまえが寂しそうにしてるのはにあわんからな」
もっと意外な言葉に、俺は目を大きく見開きさらに驚き入る。
「マジで、エバってそんなやつだったっけ?」
するとエバは照れ隠しなのか、俺の頭をがしっとつかみ。
「たまには人助けも言いモンだろ」
などという
確かにエバは昔から兄貴肌だったけど、ここまで大切にされてるとは思わなくて……何だかすごく嬉しかった。
「そっか……サンキュ、エバ」
「礼を言われるようなことは俺はなにもやってないぜ」
こんなさりげなく優しいエバが、俺はとても大好きで……
「おーい。エバ、ガイズ、そろそろ出発するぞ」
少し離れていた仲間たちが俺たちを呼び寄せる。
「わかった、今行く。ほれ、早く立っていくぞ」
俺はさしのべられた手をつかんで立ち上がり
「言われなくてもわかってるよ」
エバと一緒に歩き出す。

取材が終わり、山の麓の宿屋に戻ってきたときには日が陰ろうとしていた。
「少し遅くなってしまったな、早くガイズを返してやらないと」
シュトライトがそう言って二つの封筒を渡してくれた。
「これは?」
不思議そうに二つの封筒を見つめる。
「こっちは働いてもらった文の給料だ、もう片方は帰りの馬車代と夕食代、途中で食べるといい。
それから夕食代の方は少し多めに入れておいてあげたから、友達なり恋人なりにお土産でも買っていってあげな」
「えっ!でも、こんなにもらっちゃ…………」
俺はこんな大金をもらったことがなくて、不安げにシュトライトの瞳を見つめる。
「いいって、思いもよらずあんなに働いてもらったんだから、こっちもすごく助かったんだ、みんなからのお礼だよ」
そう言ってウィンクしてくるシュトライトに俺は満面の笑みでお礼を述べる。
「ありがとうございます!!あんなに良くしてもらったのに、こんなにもらっちゃって……」
「その分働いたんだ、ガイズにはそれだけやる価値があるさ」
その時ちょうど馬車が来たらしく、エバが道の方で俺を呼んだ。
「ガイズ!早く来い!もう荷物は積み終わったぞ」
「サンキュ、エバ!それじゃ、俺はこれで………本当にありがとうございました。」
シュトライトは、俺の頭のうえに手を置いて我が子をほめるように頭を撫で
「また一緒に仕事ができると嬉しいな」
その申し出に俺はすぐに頷いて
「はい、また良かったら誘って下さい」
そして、おれが馬車に向かおうとしたその時、宿屋の中からアメリアが出てきて、
「ガイズー」
「あれ?どうしたの?」
走ってきたアメリアが後ろに隠した包み紙をガイズの前に披露する。
「これ、宿のおばさんがあの元気な男の子にって、くれたわよ。馬車の中で食べるといいわ」
「本当に!?ありがとうございます」
もらった包み紙をポケットの中に仕舞うと、俺は勢いよく頭を下げる。
「お礼なら宿のおばさんに言って……ほら」
宿の窓からは、中年の少し太ったおばさんが顔を覗かせていた。
少し母さんに似ていた。
俺はそのおばさんに向かって大きく手を振り
「それじゃ、馬車またしてるんでもう行きます。本当にありがとうございます」
俺はもう一度頭を下げると、エバの方に向かって歩いていた。
エバはタバコをふかしながら俺を迎えてくれた。
「なんだ、遅かったじゃないか」
「うん、ちょっとみんなと話し込んじゃってさ」
エバはそうかといって俺を馬車に乗せる。
「ンじゃな、ガイズ。帰ったらルスカによろしくと言っといてくれ。それと…………」
まだなにか言いたげなエバに耳を貸し
「作戦通り、ルスカが驚いてくれるといいな」
そう言って、まるでガキ大将のようにニッと笑うエバ。
「うん、分かった、エバももし良かったらまた誘ってくれよな」
「あぁ」
俺は馬蹄さんの隣に座り
「それじゃぁな、ガイズ」
「あぁ、……なぁ、エバ。ここにいる人みんないい人たちだけだけど、そんな可でもエバが一番だったぜ」
すると馬車は走り出し、俺は大きく手を振る。
「何?おいガイズ!!」
そしてそこにはエバの苦笑だけが残った。

町中の停留所に着き俺は荷物を持って馬車から降りる。
「ありがとうございます」
馬蹄にお金を渡すと、去っていく馬車を見送り、俺は岐路へと着く。
大好きな人が待つ家に向かって………。

家に着いた頃はもうすっかり暗くなっていて、家の光はもうどこも着いてないみたいだった。
(あたりまえか、もうルスカ寝てるよな)
植木鉢の下に隠してある鍵で扉を開け、中にはいる。
やっぱり家の中は真っ暗で、俺は側にあったランプに明かりをともす。
すると俺の周りだけが、オレンジ色の光に包まれた。
片手に荷物、もう片手にランプという不安定な体制で寝室まで上がっていくと、そこにはルスカが静かに寝息を立てていた。
(やっぱり、もう寝ちゃったんだ)
俺は荷物を放り投げると、ランプを床の上に置き、急いでパジャマに着替え、
ルスカの隣に寝そべる。
「ただいま。それと、お休みルスカ」
寝ている彼の額にキスをして、俺もゆっくりと目を閉じる。

久しぶりにはっきりとした夢を見た。
何でもない、ただの日常だったけど、俺には何よりも幸せな夢だった。
ガイズが傍にいた、ただ君が傍にいた。
それだけでいい、それが幸せだから。
だから君は傍にいて……………。

夢のせいだろうか?
今日は昨日よりもゆっくりと眠れた気がする。
だけどやっぱり、目を開けても隣に眠る存在は
イナイ。

はずなのに………
キッチンから何か物音が聞こえ、朝食のいいにおいが漂ってくる。
(まさかな)
ガイズは今日までいないはず、だけど、夕方になればきっと帰ってくる
そう言い聞かせているのに、胸に淡い期待を抱いた自分がいる。
俺はパジャマのまま、大きな伸びをしてダイニングへと足を踏み入れる
するとそこには、いるはずのない存在が

「おはようルスカ、もう少しでできるから待っててな」

ついに俺は幻でも見たのだろうか?
もう一度眠りなおした方がいいのだろうか?
そう思い機微を返すと、後ろから容赦ない攻撃がかかってくる。
テーブルの上に置いてあった新聞紙が勢いよく飛んできた。
「どこいくんだよ、もう少しで朝食できるんだからそこに座ってろよ!」
俺は言われるがままに、テーブルに着き、その後ろ姿を眺めている。
それが俺には、まるで奇跡のように思えた。
「できた!」
できあがったのは、あまり綺麗とは言えないスクランブルエッグとベーコン、それにコーヒーとトーストだった。
形こそ悪いが、味はそんなに悪くはない。
「なぁ、ガイズ………」
俺はどうしてお前がいるのか聞きたかったけど
「あっそうだ!」
ガイズは急に立ち上がって俺の目の前まで歩いてきて。
「ただいま、ルスカ」
そう言ってふれるだけのキスをくれた。
そしてその後
俺たちはただ笑いあったんだ



あとがき
なは………私にしてはいいできではないかと(自画自賛)
この作品には結構な思い入れがありまして……
最初ガイズの仕事を、悪徳政治家に探りを入れる的感じだったのですが
某ルスカ氏にガイズに危ないことはさせないと言ってしまったものですから、さぁ大変。
急遽、動物○想○外に変更(笑)
多分こちらの方が危なくないでしょう。(あくまで多分………)
何よりも、オリキャラを登場させてしまいました。
彼らのモデルは『トライガン』のジョウイとレムです。(知らない人はごめんなさい)
まさか名前をそのまま使うわけにはいかず、名前を変えての登場。
コンセプトはエバの仕事仲間兼同僚的な感じ。(つか思いっきり仕事仲間だし)
それからルスガイのはずが何故かエバガイ………(とくに中盤)。何故!?
しかも今回またしてもルスカ氏に玉砕。
彼は、ハッキリ言って難しい。
どうしてもうまく書けません、バカップルぶりを発揮か妙に壊れています。(今回はかなり壊れ気味………)
もう一度一から修行をし直してきます。(泣)





























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送