いつからだっただろうか
私の心の餓えを満たすものを
探さなくなったのは…………











寂しい人






刑事というものは世間一般にとらえられているものとはかなり違う
日夜大きな事件を追っているわけでもない
ほとんどが雑用と雑務の毎日
裏へ行けば汚職と賄賂の数々
まぁ、自分はそんな世界が嫌いではないのだが………

「……………刑事……ギルディアス刑事」
「…………なんだ」
「すいませんが、この書類にサインを…………」

そういって、差し出された書類を手袋をはめた手で受け取る。

「あぁ、すまない」

書類を眺め、あらかた内容を把握するとペンをインク入れから抜き取り一筆サインを加える。

「内容は分かった、だが今度からわかりやすくまとめて書くようにしろ
そうでなければはかどる仕事も先へ進まないだろう」
「はっ、はい。以後きよつけるようにします」
「それから………」
「はぁ、何でしょうか?」
「馬車を一台用意してくれ、これから警察大臣のボルネアのところへ行く」
「分かりました…すぐに用意します」
「付き人はいらん、それとあまり遅くなるな、分かったな」

そう言うと彼は走って外へと向かった
私は壁に掛けてあったジャケットを羽織り、ネクタイをきつい締めると、ドアを開け外へと向かった。
暫くすると、一台の馬車が到達し、それに乗り込む



しばらくの間は一定のリズムを刻みながらガタガタと車内をゆらし走っていたのだが
突如大きな馬の鳴き声と共に馬車が急停止した。

「何事だ!!」

前の馬蹄を怒鳴りつけると、馬蹄はおそるおそる馬の足下を指さした
何かと思いのぞき込めばそこには子供の姿があった。

「俺は……殺しちまったんか!?」

役職柄もあり、仕方なく馬車を降りると、子供は痛そうに体を丸めうずくまった

「痛いよぉ、イタイ…………」
「大丈夫か、少年」
「痛い〜〜〜」

ざっとその体を眺め傷を確かめると、ほんの少し違和感を覚え辺りを見渡す
すると背後から近づいてこようとしている中年男性と目が合い
その男が一瞬たじろいだかと思うと何処かへ逃げ出してしまった
(『当たり屋』か………)
私は彼の体を抱き起こし

「大丈夫かい、痛かっただろう?」

何事もなかったかのように、彼に付いた土を払う

「あっ…………ハイ……………」

さっきの男が来ないことを不安に思っているのだろう、辺りをきょろきょろと見渡す姿はなかなか滑稽なものだった

「これでは歩いて帰れまい、送っていこう、私からのせめてもの行為だ」
「あの、でも…………」
「馬蹄、賃金ははずむ、この子の家までよっていってくれ」
「でも、そんな迷惑は…………」

突如の展開に困っているのだろう、あわててこの場を去ろうとする様子が哀れなほど伺われる

「そんなことはない、さぁ、早く乗りなさい」

そう言って彼に向かって手を伸ばす。
当然のごとく少年に選択肢はなく、その手を取ることしかできなかった
それが何を意味するのかさえ知らずに……………………


馬車が発進すればすぐに私は本題に乗り出した

「少年、名前は?」

そう聞かれると、彼は困惑しながらもハッキリと答えた

「トリスタンです。トリスタン・クリフフォード」
「なるほど、ではトリスタン、君は『当たり屋』だな」

不意にいたいとこを突かれ彼の体が硬直する

「一応これでも刑事というものをやっていてね、職業柄こういうのには詳しいんだよ」
「刑事って………そんな………………」

愕然とした少年をよそに話を進めていく

「こんな事をしたら、立派な犯罪だ、すぐにでも訴えることができる」
「お願いです、それだけはしないで下さい!」
「なぜだ、君は犯罪を犯したんだ、罪を償う義務がるんじゃないのか?トリスタン」

愕然とした彼を見、そんな彼に優しく言葉をかける

「そんなに怖がらなくてもいい、私なら今のことを帳消しにしてやってもいいんだぞ」
「本当………ですか!」
「あぁ、だが一つ条件がある」
「…………条件?」

私はゆっくりと口を開き彼にささやきかける

「なぁに、簡単なことさ。君が今晩私のところに来る、それだけで許して上げよう」
「今晩……ですか……………」

彼もだいたい何をされるのか気が付いたのか、少し困惑気味に答えた

「見逃してやるだけじゃない、お金の面でも君を支援しよう。どうだ、悪くはない話だろう?」
「でも…………」
「ならば私によって訴えられるほうがいいか?二つに一つだ、さぁ、どちらがいいか決めるんだ」

彼が四苦八苦している間に馬車は彼の家に到着した。
私は彼馬車から降ろし、その手を引き歩き出す
そして一つの忠告を与える
それは私の家への招待状

「選ぶのは君だ、逃げることもできる。ただ……………」
「ただ………?」
「その時は………次の日に君を犯罪者として迎えに来る、覚悟しておくんだな」

その時恐怖のため彼が一時立ち止まる
私は彼に手を引っ張られ後ろを振り向いた
その瞬間誰かが私の体にぶつかり、誰かと思い後ろを振り向けば、そこには一人の少年が立っていた

「      」
「あの、すいません。僕よそ見してて」

私が、呆然と立ちつくしていると後ろから声がかかった

「……ミュカ?」
「トリスタン、どうしたの?この人は??」
「君は……………この子の友達かい?」
「えっ………はい」
「ミュカ!」

まるで救いを求めるかのような声音でその名を呼ぶ

「ゴメン、トリスタン。僕まだ仕事の途中なんだ、また後でね」

そう言うと少年は急ぎ足で駆けていった。
ミュカと呼ばれていた少年が去っていった後でも私は心臓の高鳴りを押さえることができなかった

「刑事さん………………?俺、もうこの辺で……………………………」

そう言うと彼は私の手を振り払って駆けだした

己の手の中に温もりが消て暫くしても私はそこに立ちすくんでいた
どうにか正気を取り戻して、とうの目的である警察大臣の元へと馬車を急がせた
だが、相手と会っている間でも私はあの少年のことが頭から離れないでいた












魂に住まう獣が激しく渇望する

















アレが


























欲しいと






























あとがき


漸くUPすることができました
新作『寂しい人』一応長編ということになっているので
これからも暫く続くと思います
なるべく早くかき上げてしまいたいです
なぜなら
この作品は誰一人として幸せにならない!(と思う)
雪螺の書きたいがまま書き殴る作品に仕上がると思います
ハッキリ言って悲恋です
こういった痛いのがダメな人
これから先さらに痛くなる可能性大です
気おつけましょう(笑)

















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