その日俺に与えられたのは、父と母
父と母に与えられたのは、俺
まるでままごとの人形遊びみたいだと思った








   
夜想曲〜終章〜








トシマを離れてから2年
シキが『人』として生きることを止めてしまってから1年
俺たちは死と隣り合わせの今を生きている

「シキ?」

暗闇のなか月明かりに銀のパイプが鈍く光り、その上に真っ白い肌のシキが座っている

「月……綺麗だな、シキ」

シキはその月を見ているのか、むしろ月と認識できているのか
窓枠によって切り取られた空、その星の海を泳ぐ海月(クラゲ)のような月がきらきら輝いている
俺はその後ろから車椅子ごとシキを腕の中に包み込む

「すこし、身体が冷えてる」

抱きしめたシキの身体は、部屋の空気と同じ温度で、しばらく抱きしめていると俺の温度と同調した

「身体、温めようか?イイ酒が手に入ったんだ、一緒に飲もう」

俺はシキと窓枠の空に浮かぶ月に背を向けてダイニングの奥にある棚から上等の赤ワインを持ち出した
対戦前の希少品だったけど、デキャンタージュもせず一つのワイングラスを片手に部屋に戻る

「偶然見つけたんだ、シキの瞳と同じ色をしたワイン……」

キュッキュッと音を立ててコルクを抜き取り、グラス半分ぐらいまでワインを満たすと濃厚で芳醇な香りが辺りに広がった

「綺麗だな、まるで血みたいだ」

グラスの中のソレを数回遊ばせると一気に口の中に流し込む

「んっ…ちゅっ……ぅうっ………」

そのままシキに口付けで与え、全て飲み干してしまってもしばらくその唇を味わっていた

「シキ……」

俺はグラスとボトルを傍らに置き、シキの膝に頭を乗せて床に座り込む
月は先程と替わらず、同じ場所できらきら輝いている

「本当、綺麗だ……」

俺は虚ろげに月の光を映す瞳に見ほれて呟く





「綺麗だ、シキ」





ソレはもはや人では表しきれない
人を棄てた、限りなく人形に近い美しさを湛えていた

「白い素肌も、黒い髪も、紅の瞳も、全部…全部……」









母が昔言っていた「これじゃあまるでままごとね」と
そのとき俺は思った「なら、俺だけの人形が欲しい」と
父や母のような政府から与えられた木偶(でく)ではない
『俺だけの人形』









「綺麗なシキ、俺だけのシキ」

シキはいつの間にか俺だけのものだった
シキを欲しがる奴はたくさんいる

「でも、俺だけのシキ」

シキはいつまでも俺だけのものだった

「俺だけのシキ、俺だけの支配者、俺だけの帝王、俺だけの………」







お人形







その時月明かりに照らされたシキの瞳が一瞬揺れたように見えた
まるでそれは




















『お前も俺だけのものだ』

そう宣言するかのように



















「シキ、シキ、シキ……」

俺は壊れたようにシキの名前を呼ぶ
いや、とっくの昔に壊れていたのかもしれない























「シキ…シキ……、アイシテル……………」






















あとがき

今回はシキアキENDをまた違うとらえ方で書いてみました
こうなることがシキの幸せ
こうやってアキラに独占されることで
アキラを独占しているみたいな
そんな感じで
だからだと思いますが

アキラ真っ黒(汗)

まっ、たまにはお前も黒くなれ、なぁアキラ(笑)
今回はBGMにゲームの中で流れているNo,16の曲を聞きながら書きました
良かったらその曲を聴きながら読んでみて下さい
また違うとらえ方が出来るかも(?)





































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