その瞬間、呪わずにはいられなかった
あの男をこの世界に生み出した







  神を












                                 
黒の閃光











一つ一つ階段を上っていく
あの男と、アキラがいる部屋に向かって……
今は彼しかいないであろう部屋の扉をゆっくりと開ける
中からは澱んだ空気が流れてきて、ここ数日間おこなわれていた行為を物語るかのようだった
奥のベッドでこちらを見てたたずむアキラを見つめ、そのそばに近づいていく

「……シキなら、今はいない」
「………」

聴きたかったのはそんな言葉じゃない
近づいていく俺に怯えているのか、アキラは少しあとずさる




俺は別に構わなかった
アキラが何色に染まろうとも
最初から相容れることなどないと思っていたから
それでも
あの男の色に染まることは
許せなかった




「……ッ」

気づいたら俺はアキラの腕を強く握っていた
もうこの手は
俺の手を握って
くれないのに



でも



「……おいで」
「………」

アキラから微かな吐息が漏れる
その腕を引き、この部屋を出ようとした瞬間










アキラの足が止まった










あの男は、どこまでアキラを独占すれば気が済むのだろう










肩越しに振り返るも、アキラは目線を落として、首を振る

「……むりだ」

その言葉は絶望
そして微かな痛みが胸をよぎった
もう望めないのか
あの男の色を抜くことは
アキラがこの手を握ってくれることは

「…………」

それでも諦められなかった
アキラを




ずっと待っていたのだ




奇跡のようにそこにいた彼を




自分が一番初めに見つけたのだ




その存在を




「……ッ」

握り締めた彼の手は
暖かく
優しく
実感させてくれる
俺が生きていることを


「おいで」


もう離せない
アキラは自分のものでなくても
もう離せわしないのだ





















その手を引き、何度か路地を曲がり、目的の場所に着く
俺はいつものように丸い石の上に座り、アキラも側の鉄材に腰掛ける




彼の存在は心地よかった
俺にこそ
彼がふさわしいのだと
感じた




「俺、……やっぱり行くから」


嗚呼


「なんとなく、ここは俺の居場所じゃないような気がする」


でもアキラは違うのか


「……アンタ、どうして俺を連れ出した?シキに用があったんじゃないのか?」


もう
本当に
願いは
叶わないのか
二度と


「アンタ、一体何者だ」


思い出してはくれないのか
永遠に
それならばいっそ


「シキを恐れているのか」
「…………」


アキラ
お前すら


「とにかく、あいつに知れたらきっと、………俺もアンタも殺される」


お前の人生
幸せすら


「それは無理だ」













壊してしまおう













「あの男に俺は、殺せない」
「……どうしてそんなことが言い切れる」
「呑まれた者の、負けだ。過信は身の破滅を招く。その時、敗北は……存在の否定をも意味する。行き過ぎた感情は、仇となる」

少しずつ、少しずつではあるが
アキラの表情に焦りが、見え始めていた

「……それとシキがあんたを殺せないことと、何の関係がある」
「あの男は、俺を殺せない」
「…アンタ、まさか……、……シキの」

驚愕に満ちたアキラを、今度は腕の中に抱きしめる
それは最後のぬくもり
最後の幸福





「……気づいているか」

「自分が、何色に染まろうとしているかを」

「本当は、何色がふさわしいのか、そして……お前の選び取る色は、何色なのか」





もうアキラは色を
選んだと言うのに





















アレが来る、と



風が告げた



それは目の前に立っている彼女でも、彼女の部下でもなく
ましてや、見知らぬ三人でもなかった
アレが
あの男が
アキラを取り戻しに
俺を殺しに
来る




愚かなペテン師



俺のシナリオを忠実に踊る
ピエロ



不意に風が走った
二筋の閃光と共に彼女たちが地面に倒れる
辺りには鉄の匂いが充満する

「……馬鹿どもが」

その男、シキはしっかりとアキラをその手の中に抱きとめ
まるで、宝物のように抱きしめた
きっと、シキ自身は気づいて、いない
アキラも、気づいていない
お互いがどんなに、惹かれあい、必要としているかを



「何故、執着する」



気付かずとも惹かれあい



「執着だと」



大きく共鳴する魂



「お前にとって、必要な存在なのか」



それを感じるのは、頭脳ではなく



「……知るか」















   
















「俺のものを奪り戻しに来た。それだけだ」



なんと、憎らしいのだろうか
なんと、愚かしいのだろうか



なら、全てを終わらせよう
役者はそろったのだ



さぁ、創めよう
終幕の喜劇を




















喜劇のラストは決まっていた

「……シキ!!」

アキラの声がする

「自分の力でそいつを捻じ伏せてやる、……アンタはそう言ってた!」

アキラ
奇跡のような存在

「弱さに取り込まれる事と乗り越える事は違う!目を覚ませよ!」

彼が手を差し伸べたのは
俺ではなく
シキだということ
わかっていた筈なのに
ないはずの

軋んだ

「……貴様!!」

ラストは決まっていた
それは全ての破滅
俺と、あの男と、そしてアキラの

「お前の、負けだ」

なんと虚しい勝利
全てを無くした勝利
幸せになれない勝利

「……ッ」

シキが疾風のように動いた
俺が死んで、全てが終わる
俺の勝利は
確定する

「………」




アキラがこちらを見ていた




アキラ




俺は最後まで
お前の幸せを
望むことなど
出来なかった




許されるなら
ずっと憎しみの中で、俺を
忘れないで
いて欲しい









「ア…キラ」








誰にも聞こえない呟きが、雨の中で消えた














俺は呪わずにはいられなかった
アキラの幸せを望まない俺を
俺をこの世界に生み出した





   神を


















幸せを願っても、幸せになれなかった彼の分まで
皆様が精一杯幸せでありますように

雪螺

Thanks15,000hit






お持ち帰りの方へ
特にご連絡等必要ありませんが、著作権は放棄していませんよ(笑)
それだけ了解して頂ければどんな放置プレイして頂いても大丈夫です!
それとメチャ改行してあるんで、文章変えなければ改行数はズバズバ削っちゃって下さい(苦笑)
色とかも全部単色にしたりと、変えて貰ってかまいません


ご迷惑をおかけします(涙)






























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送